お世話になっておりますね。青二才と申します。
〇簡単なプロフィール
マグロの赤身が大好きなアラサーの一般男性。不動産テック関連の仕事に約10年間従事。宅建免許持ち。
今までに様々な業態の不動産会社500社以上とお付き合いさせて頂きました。
空気を読まず唐揚げにレモンを絞ることが得意。
さて。突然ですが皆さん、
不動産サイト(以下ポータルサイト)で物件を検索してみたことはありますか?
有名どころではSUUMO、at-home、HOME’Sなどのサイトです。
どのサイトも「無料で数多くの物件情報を閲覧できる便利なツール」として気軽に活用出来ますよね。
賃貸も売買もたくさんの物件が掲載されているので、別に自分と関係がないようなエリアや価格帯の物件情報も確認出来て、何となくボケっと見れるなど暇つぶしとしても優れています。

ここ初心者の方は勘違いしがちなのですが、ポータルサイトを運営している会社が物件を直接公開している訳ではないという事は抑えておいて下さいね。
あくまで物件を取り扱っているのは不動産会社。そんな不動産会社がお金を払って集客するために利用しているのがポータルサイトです。
そんなポータルサイトですが、実際に利用して物件情報を確認してみると不思議な現象が起きていたりします。
どう見ても同じ物件を、異なる複数の不動産会社が公開している事があるのです。
それもレアケースではなく、賃貸でも売買でも割と頻繁に遭遇します。
実際に検索したことがある人は「確かに!」と思うのではないでしょうか?
このポータルサイト上で起こる現象が、なぜ発生してしまうのか。
たくさんの不動産会社が公開している物件とは一体どんな物件なのか。

今回の記事ではこうした現象について分かり易く解説させて頂きます。
原理は同じですが賃貸・売買で分けていきますね。
☆この記事をオススメ出来る人のタイプ★
・いま物件を何らかの形で探し始めている人
・今すぐではないけど近い将来に家を買おうと検討している人
・今すぐではないけど近い将来に賃貸で引っ越しを検討している人
総じて「これから何らかの不動産取引を行う可能性がある人」は把握しておいた方が良い内容です。
ポータルサイトに掲載されている物件情報は誰でも見ることが出来ますが、自分にとって本当に重要な情報を正しくキャッチ出来るかは受け取り側の知識レベルによって大きく変わってきます。
不動産会社は何で同じ物件を揃って公開するのだろう?何のメリットがあるのだろう?
こういった疑問を解消していって、不動産会社側の思考を理解出来てくると自然と対等なコミュニケーションが図れるようになりますよ。
・・・とは言え5月病は怖いですからね。ちゃんと休息を取りつつ、リラックスできる環境で肩の力を抜いてゆったりと休み休みのんびり読んでいって下さい。
【賃貸版】同じ物件が何件も公開されている現象について
まずは賃貸からスタートさせて頂きます。
私が言いたい現象を実際のポータルサイト画面から引っ張ってきましたので、まずはご覧下さい。

途切れていたりモザイクが掛かっていたりと加工してありますが、明らかに同じ物件の情報が3つ掲載されているのが分かりますよね。
ちなみに画像内右側のモザイクは「掲載不動産会社名」を非表示にしてあります。
3物件とも異なる不動産会社の名前になっていました。

なぜこういう状態になってしまうのでしょうか?
その理由を一つずつ紐解いて説明していきます!
ちなみに大前提として
「不動産会社も一般消費者も、みんな何かしらで自分の利益(メリット)にならないことはやらない」
という事を何となくでも頭に入れておいて下さいね!その方が色々吸収しやすくなると思います。
客付仲介会社の視点から考えてみる

客付仲介会社という言葉に馴染みがない方もいらっしゃいますので、簡潔に説明します。
客付仲介会社とは?
実際にお客さんへ物件を紹介して契約まで進めるタイプの不動産会社。
仮に自社管理物件が無くても出来る業態であり、たくさんの物件情報を掲載し、店舗もお客さんが入り易いような工夫がされている。総じてお客さんの呼び込みに注力しているのが特徴。
さっきの画像であれば3社の不動産会社が同じ情報を載せていましたよね。
私なりに調べたところ、3社全てが客付仲介会社の条件を満たしていました。

ではそんな客付仲介会社がポータルサイトに公開して良い物件とはどんな物件なのでしょうか?
下記に書いていきます!
①自社で管理している物件
②他社が管理している物件のうち、客付けしてもOKとして業者間に公開されている物件、のうちでさらに広告転載の許可を貰えている物件。
ざっくり書くとこうなります。
①は何となく「そりゃあ当たり前でしょ!」と感じるはずですが、
少しややこしくなるのは②ですね。
客付仲介会社にとって①の条件を満たす物件なんて少ないですので、ポータルサイトや自社ホームページに掲載している物件のほとんどは②の条件を満たす物件となります。
そして大事なのが、客付けしても良いよと言ってくれている物件でも、広告の転載はダメだよとなっている物件が多く存在しているということです。

来店してきたお客さんに紹介するのはOKだけど、その物件情報を使って集客(広告転載)するのはNGっていうイメージですね。
となれば②の条件を満たすのは「そのうえで広告を転載しても良いと物件オーナーに許可を頂けている物件」となります。
客付仲介会社は自社で対応出来るエリアの範囲内で、②の条件を完全に満たす物件を多く掲載して集客して、契約をたくさん決めて売上を上げていきたいんです。
ただし客付仲介会社はエリアごとに1社しか存在しない訳ではありません。
②の条件を満たす物件は限られているのに、仲介会社は複数存在している。
だからこそ同じ物件を複数の客付仲介会社が掲載して、上記の画像のような状態になるっていうのが、仲介会社目線で考えた時のロジックです。
管理会社・物件オーナーの視点から考えてみる

では逆に「広告を転載しても良い」と言ってくれる管理会社・オーナーの考えはどうなのでしょう。
これについては正解・不正解がありませんので、メリット・デメリットという形でまとめてみました。
・仲介会社経由で多くの種類のサイトに公開されるので、住みたいお客さんに情報が素早く行き渡る可能性が高い。
・仲介会社がそれぞれ広告費を払って物件掲載してくれるので、管理会社目線ではコスパが良い。
⇒今までの傾向から「空室の期間が長くなりがちな物件」であればメリットがある!
・複数の仲介会社が同じサイトに公開していると、あまり詳しくないお客さんに警戒されてしまうリスクがある(さっきの画像の状態を見て、怪しいと誤認されてしまう)。
・すぐに契約が出なかった時に「まだこの物件たくさん公開されている」と悪目立ちして余計に空室期間が長くなるリスクがある。
⇒今までの傾向から「空室になってもすぐに決まる物件」だとデメリットが目立つ。
ざっくりですがこんな感じでしょうか。
要するに
広告転載しても良い物件=普通に公開しているだけでは入居希望者が見つかりにくい物件
と捉えるとシンプルで分かり易いですね。

ちなみに超人気の賃貸物件であればそんな工夫なんてしなくても、下手したらネットに掲載される前に入居者が見つかることもあるくらいです。
これらが「賃貸で同じ物件が何件も掲載されている現象」の理由になります。
そしてどんな物件がその現象によって重複して公開されるのかについてもまとめます。
◎オーナー・管理会社目線
➡早く入居希望者を見つけたいが、情報を出し渋っていたらすぐには決まらなそうな条件と自覚している物件
◎客付仲介会社目線
➡他社が管理していて客付けしてもOK&転載してもOKな物件の中から、公開していれば問い合わせが入るかもしれないと判断した物件
ここまでの説明で何となく原理は掴めましたでしょうか?
売買も理論は似ていますのでこのまま進めさせて頂き、記事の最後で皆様に本当に習得して欲しい情報をまとめていこうと考えていますので、休憩も挟みながらゆるりとお読み下さいませ。
【売買版】同じ物件が何件も公開されている現象について
基本的には賃貸と同じ流れですので割愛しながら進行していきます。
さっきとは別のポータルサイトで確認してみました。

途切れていますがこんな感じで複数の不動産会社がこちらのサイトでも同じ物件を公開していました。
同じ物件を掲載している会社は売買客付仲介会社でした。
それでは前述した大前提である、
「不動産会社も一般消費者も、みんな何かしらで自分の利益(メリット)にならないことはやらない」
を再度念頭に置いて頂きつつ、売買版も解説していきます!
客付仲介会社の視点から考えてみる

売買の客付仲介会社は購入しようと考えている人に物件を紹介して契約まで進めていき、収益を上げていくのが仕事です。
やっぱり客付会社なので、お客さんにたくさん来店してもらう必要があります。

売買の客付会社がサイトに公開できる物件の条件は以下の通りです。
①自社が売主の物件
②自社が売主から直接販売の依頼を受けている物件(専任媒介)
③他社が売主の物件のうち、客付けしてもOKとして業者間に公開されている物件、のうちでさらに広告転載の許可を貰えている物件
④他社が売主から直接販売依頼を受けている物件(専任媒介)のうち、客付けしてもOKとして業者間に公開されている物件、のうちでさらに広告転載の許可を貰えている物件
さっきより多くなっていますが大枠で捉えれば同じです。
「自社で公開できる物件」か「他社から客付けの許可を貰えていて、かつ広告転載の許可も貰えている物件」です。
正直企業として考えれば①、②の物件を増加させていくのが一番重要です。
しかし集客しなければならない以上、売買客付仲介会社は③、④の物件の中から問い合わせが入りそうな物件をたくさん選んで公開し続ける必要があるのです。
もっとも賃貸と違って売買は報酬の単価が高いですので、賃貸以上にライバルとなる客付会社が多くなります。
なので売買仲介の会社は担当できるエリアを可能な限り拡大して対応出来る物件の母数を増やしたりします。
賃貸よりもフットワークを軽くすることで従業員の負担は増えますが、その分報酬が高いんだから頑張れるよねっていう理屈です。

でもその程度の努力は他のライバル会社も行っているので差が開きにくいのが現状です。
よってエリアを拡大しても差別化が図り切れず、結果として③or④の条件の物件を公開するとライバルである他の売買客付仲介会社と物件が被り、画像のような状態になるというのが一連の流れです。
③他社が売主になっている物件で、売主の立場から考えてみる

さっきの①~④の条件を引き継いで説明していきます。
まずは③の条件。
「他社が売主の物件で客付けOK&広告転載OKの物件」とはどんな物件でしょうか。

実はこの条件を満たす物件は比較的多いです。
「新築戸建」「リノベーション済み中古マンション」が主流ですね。
その理由はシンプルです。
売主として土地を買ってその上に新築戸建を建てる会社も。
中古マンションの1室を買い取ってリノベーションして再販する会社も。
どちらも一般向けに販売活動まで行うとしたら結構大変なんですよ。
そういった会社は既に物件の仕入れという業務に注力していますので、購入検討者への販売活動まで着手すると肝心の仕入れ業務が疎かになるリスクがあるのです。
そのため会社方針にもよりますが、仕入れに注力し続けるために販売活動は客付仲介会社に任せてしまう売主企業があるという訳です。
この場合広告の転載までOK出す会社が多く、そういった物件がポータルサイト上で重複しがちです。

ぶっちゃければ③の条件を満たす物件ばかり掲載していますよ。
成約させれば両手仲介になりますしね。
※内容が類似している記事がありますのでこちらも参考になさって下さい。
こちらに他社が売主の物件を、売買客付仲介会社が積極的に公開する理由が記載してあります。
④他社が専任媒介を結んでいる物件のケースで考えてみる

③に比べるとこの④は物件数が少なくなります。
その理由も大変単純です。会話方式で説明していきますね。

○○マンションのオーナーさんを何とか説得して専任媒介を勝ち取ったぞ!
ウチでしか扱えない物件だし販売活動頑張るぞ!

ウチで買主まで見つけてくれば両手仲介。
売主&買主から仲介手数料が貰える案件だ!
出来れば他社に入ってきて欲しくないけど。。。
レインズには載せないとだからなあ。。。
・・・ん?電話だ。
※レインズについて説明された記事はコチラを参照下さい。

お世話になっております。レインズ見たので連絡しました。
○○マンションなんですが、当社でもネット公開して良いですか?

すみません、売主さんから他の会社からのネット公開を止めてくれと言われてまして。
(B社さんに契約されたら仲介手数料が買主から貰えなくなっちゃうからね。少しでもその確率を減らすためにネットへの転載だけはさせないようにしないと)

分かりました。
(くそ~ワンチャン掲載OK出るかと思ったけどやっぱダメか)
フランクにし過ぎたかもしれないですが、こんな感じで専任媒介を結んだ会社はレインズへの掲載義務こそありますが広告転載を許可しなければならない訳ではないので、そっちのOKが出辛いんですね。
なので④の条件を満たすには、専任媒介を結んでいる側の事情が絡んでくるのです。
★④の条件を満たすには☆
・専任媒介を結んでいる会社が積極的に客付けを行わないパターン
➡逆に言えば他社が決めても売主からは仲介手数料が貰えるので、お客さん対応を面倒に感じている不動産会社は客付けを他社に任せる傾向にあります
・売主の売却希望価格が相場よりも高額で、専任媒介を結んでいる会社がそのままの条件では決まらないと判断しているパターン
➡どうせ決まらないが売主の手前その条件で公開せざるを得ないので、他社の転載までOKにして売却希望価格を相場まで下げようとすることがある。
④のケースでは専任媒介を結んでいる会社の都合によって
「何件も複数の売買仲介会社から公開されている物件」
の条件が変わってきてしまいます。
ですが③に比べて母数が少ないので、売買で同じ物件がたくさん公開されている場合は、
そのほとんどが③のケースだと考えて頂いて差し支えありません。

ちなみに④のケースでは③と異なり、
「中古戸建」「中古マンション」「売地」で公開される物件がほとんどです。
業者が売主ではないので「新築」であることはありませんし、
「中古マンション」でもリノベーションされていない物件がほとんどです。
同じく重複している物件でも、その物件の種目次第で③か④かの判断が出来るってことです。
今回のまとめ:この記事で一番伝えたかったこと

さて、ここまでで
「不動産サイトで物件検索したら、同じ物件が何件も公開されてる現象」
についてそうなってしまう理由と、
「その対象になるのは一体どんな物件か」
について解説してきました。

口酸っぱく繰り返しますが、これらは登場人物がみんな「自分にとって何らかのメリットがある選択肢しか取りたがらない」からこそ起こる現象です。
そんな情報をお伝えしたうえで、今回の記事で一番伝えたかったことを書いていきます。
【1】サイト内でたくさんの不動産会社が載せている物件であっても、その物件自体が怪しいとは限らないので「自分が欲しい条件の物件かどうか」の目線で冷静に情報を処理すべし!
➡たくさんの不動産会社が公開している理由を推察したうえで、その物件に興味を持つのか持たないのかは自分の価値観次第です。
【2】例えば興味を持った物件が5社に公開されているとして、物件情報はどうせ同じだから1社分の確認でOK。ただしその不動産会社の情報は5社分しっかり確認すべし!
➡まずは取引態様を見る。「売主」「貸主」「専任媒介」で出している会社があれば迷わずそこに行くべし!取引態様で差が付いていないなら、それ以上物件の情報を見ても無駄なので、5社それぞれのホームページやポータルサイトに書かれている情報を確認して「会社」で選びましょう。
この2つですね。
特に【2】は重要です。
同じ物件を紹介している以上、ライバルとの差別化を図るために各社が常に努力をしています。
仲介手数料を半額あるいは0円にしてくれる会社も今や少なくありません。
また賃貸でも一定の支払金額をクレジット払いにしてくれるところも増えています。
それどころか今後はPayPayなどのキャッシュレス決済サービスとのコラボレーションにも積極的な不動産会社が増加してくるでしょう。
市民権を得た有能サービスは不動産に関わらず、様々な業種に付加価値を生み出してくれるものです。

ポータルサイト上で気になっている物件がたくさんの会社経由で掲載されているとしても、その時点で根拠なしに疑うのではなく、掲載している不動産会社を1社1社しっかりと見定めて少しでもメリットのある会社を選択していく工夫が求められてきますよ。
どの業態の不動産会社も自社の利益を上げていくために必死なので、それを逆手にとって上手に不動産取引出来るように、少しずつ不動産会社のしくみを一緒に学んでいけたら嬉しいです!
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