お世話になっております。青二才と申します。
〇簡単なプロフィール
マグロの赤身が大好きなアラサーの一般男性。不動産テック関連の仕事に約10年間従事。宅建士免許保有。
今までに様々な業態の不動産会社計500社以上とお付き合いさせて頂きました。
枕元に落ちている抜け毛の本数次第でその日一日のテンションが大体決まります。
今回は少し今までとは毛色の違う記事をご用意させて頂きました。

ズバリ、不動産における「物件の価格」がどのようにして決められているかについてです。
なぜこのテーマを選択したかというのも理由がありまして。
不動産購入は人生において最も高額な買い物になると言われています。
恐らくほぼ全員の方が不動産購入で損したくない!と考えている事でしょう。
ここで相場より高く掴まされて損でもしたら、他で取り返す事自体もう困難ですからね。
しかし不動産関連の仕組みを知らない方が多く存在することも事実。
スーモなどのポータルサイトやホームページに掲載されている物件情報を見て、そこに載せられている物件の価格が割高かどうか判断出来る人は一体どれだけいらっしゃる事でしょうか?
また物件価格の算出は「国や都道府県が用意した指標」や「相場の値動き」を加味して行われるのが基本なのですが・・・。

「国の指標」とか「相場の値動き」とかが分からないからこそ、家を買う時の不安が消えないという問題もあると思うんです。
特に相場に関しては何だかざっくりとした表現過ぎて要点を掴む事すら難しい印象です。
変な話ですが、不動産会社の営業マンに

「いやいや!その物件は相場と比較してもかなり割安ですから即決した方が良いですよ!
とか言われたら良く分からないまま契約してしまいそうな危うさすらあります。
まあぶっちゃけ先にネタバレすると相場なんて曖昧な概念とも言えますので完璧に掌握するのはとても難しいのですが、
この記事では「出来るだけ相場という言葉に振り回されないために」必要な情報をまとめていきたいと考えています。
今回の内容を理解して頂く事で

・この物件の価格はこんな感じで設定されているのかな?
・相場価格が上がっている要因は何だろう?ずっと上がり続ける可能性はあるのかな?
などと「相手側の視点にも立って考えられる買主として」冷静に不動産購入という人生の一大イベントに立ち会えるようになりますよ。
【かみくだき説明】国が用意している土地価格の指標を知ろう。

まずはいくつかある土地価格の指標について簡単に整理します。
①公示地価②基準地価③路線価 などがあります。
本来ならばその指標ごとの違いを細かく解説するべきなのかもしれませんが・・・。

当記事のテーマとは逸れるのでここでは①の公示地価のみ説明します!
あくまで「こういった指標があるんだな」程度に理解して頂ければOKです!
なお私はお国が用意した資料に拒否反応を示す性質なので、表現はグチャグチャに噛み砕いております。あからじめご了承下さい。
★土地価格の指標について★
①公示地価(こうじちか)
➡エリア毎に地点を定めて国交省が発表している、毎年1月1日時点での1㎡あたりの土地価格。
なおこの価格が実際に取引される価格とイコールになる訳ではないので注意。
どこまで行っても一つの指標に過ぎません。
ここで重要なのは「なぜこのような指標を国が毎年用意しているか」といった部分になります。
不動産は一点物なんて言葉が表すように、全く同じ条件の物件は市場に一つもありません。
よって指標を用意せずに不動産業界を野放しにしていると、すぐに無秩序な取引が横行するようになるでしょう。

こうなると損をするのはいつも「知らない人」です。
不動産会社は「知っている人」には慎重ですが、「知らない人」はカモにしますからね。
その傾向がもっと顕著に表れる事になります。
もしも土地価格の指標がないと、物件を売却しようにも「どのくらいの金額で売れるのが適正か」判断する事も困難になります。
購入する時もそうです。大体このくらいの金額で買えるはずという考えすら持てなくなります。
無知な人が多ければ、プロである不動産会社は今よりも上手に莫大な利益を確保出来ますよね。
言い方は悪いですが一方的に騙して不当な条件で契約させる事だって容易になりますから。
そうなってしまうと国としても困りますので、毎年不動産鑑定士にも依頼を掛けて
「土地価格の指標」を発表しているのです。

これで不動産の知識に乏しい人でも指標を用いて情報の正誤を判断可能になります。
またこの誰でも確認出来る土地価格の指標があるだけで、不当に騙してお金を稼ごうとする不動産会社への牽制にもなります。
公示地価のような指標があるおかげで、価格の安定しない不動産においても秩序が守られている訳です。
しかし、とは言え残念ながら公示地価などの指標だけで物件個々の価格は決まりません。
あくまでこれは大まかな参考値に過ぎないという事を覚えておきましょう。
物件の価格はどうやって決められている?

では物件個々の価格はどのようにして決められているのでしょうか。
先に結論から申し上げたいと思います。
☆物件の価格はどうやって決まる?☆
➡売主が売りたい金額で募集を掛けていますので、その金額で買いたい人がいれば物件の価格が確定します。要するに需要と供給の世界です。
はい。これだけです。
実は大変にシンプルなのです。
売主が5,000万円で売りたいと思っている物件があったとして、その物件を5,000万円で買いたいという買主が現れれば契約が成立します。
そうなればその物件の価格は5,000万円になるのです。

何だか至極当たり前の事を言っていますよね。
別におちょくっている訳ではないので許して下さい。
しかしこれが中々奥が深いのですよ。
上記事例で5,000万円で所有物件を売りたいと考えている売主がいたとして、
誰も買いたいという人が名乗り出ないまま時間だけが過ぎていったとしましょう。
この時売主が取れる行動は大きく分けて2つあります。
①売れ残っても良いから今の5,000万円で募集を掛け続ける
②早く売りたいので(例えば)4,500万円に募集価格を下げて買主を見つける

売主が①を選択しているうちは物件価格は5,000万円のままです。
いずれ買いたいという人が出てくれば無事に5,000万円が物件価格で確定します。

売主が②を選択した場合、買いたい人は出現しやすくなりますが物件価格は4,500万円に下落します。販売期間中に物件の価値そのものが下がった訳ではないのですが、売主の売りたい金額が下がったら物件の価格も下がるのです。
要するに結局は「需要と供給」で成り立っているという事です。
欲しがる人(買主)が多ければ売主は金額を吊り上げますし、
逆に欲しがる人がいなければ売主は買ってもらえるラインまで金額を下げざるを得ません。
もちろん売主目線では「そんな金額まで下げないと買い手が付かないなら売らねえ!」といった選択肢を取るのも立派な戦略の1つです。
逆に買主にも「こんな金額じゃないと買えないの?それなら別に買わなくても良いや」と判断する権利があります。
不動産価格なんてこんなモンなんです。そこまで堅く考える必要はありません。
ただし先述した「公示地価」などの指標を用いることで一定の基準値は世間の共通認識として存在しています。
なので相場で5,000万円程度の物件を1億円で売りたいと売主が考えるのは勝手ですが、その金額で買い手が付くことはありませんので結果的に相場付近まで価格は落ちていくのです。
相場価格が上昇していく仕組みについて

さあここからが本題と言っても過言ではありません。タイトル回収です。

結局「相場」って何なのよ!
という疑問を解消出来るよう頑張ります!
では早速、相場価格が上昇していく仕組みを順を追って説明していきましょう。
なお今回は解説を分かり易くするために、その始まりを「新築戸建」からとさせて頂きます。
新築戸建の建売販売会社の立場から考えてみる
新築の建売住宅を建築して販売する不動産会社の立場から考えてみましょう。
彼らは「土地を仕入れて」「建売住宅を建てて」「販売する」のを生業としています。
言うなれば「売主」としての業務を行っている訳ですね。
また土地と建物がセットになっている建売住宅を販売する以上、土地の仕入れは販売以上に大切な業務となっています。

彼らの利益は「販売価格ー(土地の仕入れ価格+建築全般に関わるコスト+その他広告費など)」で簡単に表せます。
逆説的に考えれば土地の仕入れ価格以外はある程度決まった金額のコストが掛かると分かっているので、利益の計算が立ちやすいというメリットがあります。
さあここで問題です。
Q.もしもこの状況から土地の仕入れ価格が急に上がったとすると、彼らはどのように対処するでしょうか?
せっかく問題を出したので少し回答までに補足説明を挟んで場繋ぎを入れさせて頂きます。文字小さくしますけど結構重要な内容です。
建売販売会社の「土地仕入れ価格」が上がる要因は?
➡市場に現存している土地が少なくなると仕入れ価格が上がります。
他の建売販売会社も土地を仕入れたいのに数が少ないという状況になれば、土地を持っている売主は強気に物件価格を吊り上げます。だって高くしても売れるんだもん。
では答えを発表します。
A.仕入れ価格が上がったぶん、建売住宅の販売価格を上げてバランスを取る
となります。
土地の仕入れ価格が上がったとしてもそれ以外のコストは大きく変わりませんからね。
それで今までと同じ価格で販売していたら利益が圧迫されてしまいます。
民間の営利企業としてはその選択肢はありません。
土地を高く仕入れてしまったのなら完成物(新築戸建)も高く売らないと商売上がったりですし。

先ほども説明したように物件の価格は「売主が売りたい金額」で決まります。
もしこの金額で売れなければ彼らは仕方なく販売価格を下げて売り切ろうとするでしょう。
そうなれば下手をするとその物件の販売自体が赤字になってしまう可能性も出てきます。
したがって高く出した販売価格で買主が見つからないならば、ひとまず値下げをして物件単位では赤字になったとしても何とか売り切るのが自然な流れです。

あれ?前見てた時より新築戸建の価格上がってない??
今この物件買ったら損する気がするからやめとこ。
そしてまあこんな感じで、基本的には価格を上げると購入検討者も慎重になり売れにくくなります。
こうして建売販売会社は仕方なく値下げをして利益を削りながらも売り切ることに成功しました。
しかし今後は同じ失敗をしないようにしなければなりません。
以降はどんなに土地を仕入れたいとしても
「仕入れても良い金額の上限」を定めて赤字になる現場が出ないよう調整するはずです。
こうなれば彼らに土地を販売していた売主達も値段を下げざるを得ません。
その金額で買ってくれる買主(建売会社)がいないなら、値段を元に戻すしかないからです。
こうして通常は一時的に仕入れ価格が上下する事こそあれども平均的には大体安定した金額になっていき、相場も横ばいの状態をキープする事となります。

しかし例外があります。
販売価格が高くなっても、購入検討者が減らないケースがあるのです。
こうなると相場はどうなるでしょうか?
価格が上がっているのに購入検討者が減らない(需要が落ちない)場合


価格が上がっている?知らん!それでも購入したいから買うんだ!
もしも物件の販売価格が上昇しているのに買いたい人が減らない場合、
「高く出しても売れる」状況になります。
こうなると建売販売会社は多少割高でも仕入れのペースを落としません。
仕入れられる土地が少ないのに彼らが仕入れようとする以上、仕入れ価格は高騰し続けます。
土地を持っている売主にとってはウハウハですよ。
高めに金額を吊り上げてもオークション方式で買ってくれる訳ですから。

反面見た目の売上高こそ伸びますが、仕入れ値が上がっている以上建売販売会社の利益率はそこまで良くなりません。得をするのは最初から土地を所有している人たちです。
このような状態になってくると「相場価格が上昇している」と言えます。
新築物件の相場が上がると中古物件の販売価格も引っ張られる
そして新築物件の価格が上がると今度は中古物件の価格まで上がっていきます。
これについても「需要と供給」で説明が付きます。

新築高過ぎて手が出ない・・・。
でも家は欲しいから中古物件まで裾野を拡げて探そうかな。
このように今までなら新築の中で検討していた顧客が中古に市場に流れてくるようになるのです。
中古物件で探す人が増えれば、中古物件の売主はどう考えるでしょうか?
当然出来るだけ高く売りたいと考えますよね?

なんか最近相場が上がってきてる気がするし、私も売却検討しようかな。
売れなきゃ売れないで良いし、購入時と同じ金額で不動産会社にお願いだけしてみよう!
こうして新築戸建の建売販売会社から始まった販売価格高騰の流れが、
巡り巡って中古物件を含む売買物件全般の相場を吊り上げる結果になるなんて事も起こり得るのです。
この流れは
「購入検討者が激減して物件が売れなくなる」=需要が激減するか、
「市場に流れる物件数が激増して物件が大量に余るようになる」=供給が激増
しない限り続く事でしょう。

相場価格が下落する仕組みについてはこの逆パターンを考えて頂ければOKです。

相場という概念がどれだけ不安定で曖昧なものか、ご理解頂けたでしょうか?
不動産会社の営業マンに「相場ではこのくらいなんですけど、そこから考えたらお得ですよ!」的な言葉を言われたら、ちゃんとその詳細まで伺うようにしましょうね。
・今の相場価格を客観的に説明できる資料&データを所望
・ここ数年~十年くらいの相場推移が分かる資料&データと、現在の相場が置かれている立ち位置についての説明を求める
そのまま流されて「はえ~お得なんだ」と誘導されるのはダメですよ!絶対!
まとめ:みんな「得をしたい」と考えているから相場は揺れ続ける

https://athome-inc.jp/news/data/market/shinchiku-kodate-kakaku-202205/
(↑ちなみにこれが直近の首都圏相場です。実はコロナ禍において爆上がりしています。ご興味ある方がいればこの原因についても私なりの解釈でまとめて記事にします!)
さてここまでの内容をまとめていきましょう!
〇土地価格の指標(公示地価など)について
➡秩序を守るために国や都道府県など公的機関が基準値を毎年用意してくれている。
〇物件の価格設定について
➡売主が売りたい金額で募集する。その金額で買いたい人がいれば価格が確定する。自由競争なので「この物件はこの金額で売れます」なんていう決め事はない。
〇相場価格について
➡需要と供給のバランス次第で変動するもの。
買いたい人が多くて物件が少ない=需要増&供給減で物件価格はUP↑
買いたい人が少なくて物件は余っている=需要減&供給増で物件価格はDOWN↓
と、要点だけをまとめるとこんな感じですね。
冒頭でも書きましたが、一般顧客が詳細な物件相場の値動きまで把握することはほぼ不可能です。
そんな中で私がお伝えしたかったのは、
物件を購入する側なら売却する側の立場を、売却する側なら購入する側の立場を、
ちゃんと理解した方が納得の行く取引が出来ますよという話なんです。

アナタが物件の購入を検討しているなら、売主である相手方も「自分は得をしたい」と考えているもの。
売主が定めている物件価格はそんな前提条件があるうえで決められたものである事を理解するべきです。
よって一見すると他の物件より割安に見える物件があったとしても、それだけで相場より割安だと思い込まない事も重要です。
もしも本当に相場より割安であれば他の購入検討者も一斉に群がるはずですから、少なくとも一本釣りが出来る確率は極めて低くなります。
こういった物件には他に値段を下げざるを得ない理由があるものですから。
そういった表面的な情報で判断せずに、
・なぜ売主はこの物件をこの金額で設定したんだろう?安い気がするけど何か事情があるのかな?
・相場が高くなっているらしいから割高かもしれないけど、そのリスクを考慮したうえでもこの物件買いたいな・・・。
などと、自身が納得の行く条件でリスクも飲み込んだうえでの不動産取引が出来るようになって頂けますと嬉しいです。
正直、不動産取引に正解はありませんからね。何も知らないまま購入して後で後悔なんて事にならなければ良いのです。

兎にも角にも「みんな自分が得をしたい」と考えているのがこれらの話の根幹ですから、そこの意識だけはブラさず持っておきましょう!
では、今回はこの辺りで。
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