こんにちは。青二才と申します。
〇簡単なプロフィール
マグロの赤身が大好きなアラサーの一般男性。不動産テック関連の仕事に約10年間従事。宅建士免許保有。
今までに様々な業態の不動産会社500社以上とお付き合いさせて頂きました。
最近嬉しかったことはずっと痛かった親知らずが奇跡的に欠けて元通りになったこと。
前回の記事で不動産売却における「囲い込み」について語らせて頂きました。
不動産会社が自らの利益を追求するがあまり、両手仲介のために物件情報を独り占めしてしまう行為の事を指します。
囲い込みしたからと言って必ず売主に迷惑が掛かるとは限りませんが、
善良な不動産会社に任せるのと比べたら
①希望価格で売れないリスク
②長い期間売れ残るリスク
が発生する確率も上がりますので、売主の立場で考えれば「止めてくれよ」という販売手法です。

そんな「囲い込み」ですが、実は大手と呼ばれる不動産会社の方が積極的に行っているケースが多いという事実があります。

名前も知らない胡散臭い不動産会社よりも、CMを流していて全国的な知名度の高い大手不動産会社の方が安心だと妄信している方がいましたら、是非今回の記事を読んで「ネームバリューがある会社=安心」という訳ではないんだなと学んでいって頂けますと嬉しいです。
とは言え大手なんてクソだ!などと短絡的な結論を出す事もしません。
あくまで大手不動産会社が何を考えて、どのように普段の仕事を回しているのかについて解説したうえで、なぜ「囲い込み」をしてしまうのかまでの流れを辿っていこうと思います。
・・・最近ずっと暑いですからねえ。水分だけでなく塩分も補給しないと頭痛くなったりしますから、くれぐれも体調には気を付けて日々を過ごして下さいね。
では行きましょう!!
大手不動産会社って例えばどんな会社?

大手不動産会社といっても明確な基準がないと分かり辛いですよね。
まずは最初にここで言う所の「大手不動産会社」について、簡単に整理させて頂きます。
①FRK(不動産流通経営協会)に所属している不動産会社
いきなり何のこっちゃ?と感じた方もいるかと思います。申し訳ありません。
FRKについては以下に説明内容を添付してみます。
一般社団法人不動産流通経営協会は、不動産流通を担う大手・中堅の住宅・不動産会社を会員とする法人です。昭和43年前身である不動産取引 センターとして創立以来(正式設立は昭和45年5月29日)、不動産物件の情報交換事業をはじめ不動産流通に関する調査研究など、不動産取引の適正化、円滑化と不動産流通に関する諸制度の改 善に取り組んでまいりました。
出典:FRK 一般社団法人 不動産流通経営協会
いやー難しい言葉が多いですね。とても頭が良さそうです。

簡単に言うと「売買仲介を行っている大手不動産会社が所属している組織」って感じです。
詳しいところまでの理解はしなくて構いません。「FRK」という言葉だけ覚えておいて下さい。
例えばですが「三井」「住友」「野村」とかそういう感じの規模の企業をイメージして下さい。
こういった会社を今回は大手不動産会社と定義させて頂きます。
まあ実際にはその中でも業態は異なりますので、仲介をあまりしない企業が含まれていたりもするのですが、今回はそこは気にしないで頂いて構いません。

②ポータルサイトに物件を200件以上公開している不動産会社
コチラに関しては世間一般的に「大手不動産会社」とは呼ばれない企業を含むこととなります。
仮に小規模で運営している企業であっても、広告費用さえ払えれば基準を満たせてしまいますからね。
また200件以上という基準も今私が定めただけなので曖昧です。
ここはあくまで目安です。本質としては
「規模感を大きく見せて客付仲介の契約数を伸ばそうと考えている企業」
であれば、囲い込みを行うかもしれない大手不動産会社と認識してOKといったスタンスです。
正直100件を超える件数になってくるとどんなに大きな不動産会社でも「自社物件」だけの掲載では実現不可能な領域になります。
まして200件掲載しているとなれば、ほぼ100%他社物件の掲載が主軸となってくるでしょう。

仮に実態は中小企業だったとしても、それだけ多くの物件を掲載している会社なら社名の露出度は高くなりますからね。
例えばですが首都圏なら「東宝ハウスグループ」「ME不動産グループ」などを想定しています。
住宅の購入or売却を考えた経験がある方であれば一度くらいは名前を聞いた事あるかもしれませんね。
ちなみに①のFRK所属企業は基本的に自社の物件しか掲載しませんので、ポータルサイト上に100件以上載せること自体スーパーレアです。いや、ウルトラレアと言っても誇張にはならないでしょう。
大手不動産会社が物件を「囲い込む」理由とは?

①知名度が高くて客付する力があるから
何だか元も子もない理由ですが、一つ目としては
「囲い込み出来る環境にあるから囲い込みする」
が挙げられます。

大手=安心という固定概念を持っているお客様は本当に多いですからね。
大手不動産会社の看板は伊達ではないと言えます。
大手不動産会社は専任媒介を結んでいる物件などの「自社物件」をポータルサイトやホームページに掲載しているだけで一定数の問い合わせが入ります。
待ってれば物件の条件や相場次第で問い合わせが入ってくるなら、顧客のためを思わない限りわざわざ他の不動産会社に客付依頼するのもバカバカしいと考える訳ですよ。
片手仲介よりも両手仲介の方が儲かるからそうする。
不動産会社目線ではとても効率的な考え方です。

これが零細で実績も知名度もない会社になるとそうは問屋が卸しません。
・そもそも知名度が低いので売却相談も来ない。専任媒介を結ぶ機会がない。
・仮に専任媒介を取れたとしても一般顧客からの問い合わせは大手ほど来ない。
(「何か怖いから知らない不動産会社には連絡したくない」と考える顧客も多い)
となるので、この点は大手不動産会社の特権と言えます。
②それだけ多くの広告費・人件費が掛かっているから
二つ目の理由はコスト面です。
大手不動産会社はその立ち位置をキープするために多くの予算を掛けているケースが多いです。

私の独断と偏見で「こういったところに費用が掛かっていそうだな」を以下にまとめさせて頂きます。あくまで一例ですので追及はご勘弁下さいまし。

人件費についてはカットします。
人をたくさん雇っているのだからコストが掛かるのは当然ですので。
☆大手不動産会社が掛けている広告費
[1]キレイで立派なホームページの作成費とその維持費
[2]ホームページに誘引するための広告費(リスティング広告、SEO対策など)
[3]幅広く社名を売り込むための広告費(テレビCM、youtube広告など)
[4]スーモなどのポータルサイトへ物件情報を載せるための広告費 etc.
まあこんなもので良いでしょう。一つ一つの項目を理解する必要はありません。
ここで重要なのは
「大手不動産会社という認知を得るまでには莫大な金額の広告費が掛かり続ける」ということです。

莫大な金額・・・100万円くらい!?
いえいえ。会社にもよりますが[1]~[4]をフル活用していれば100万円じゃ利かないですよ。
ちなみにFRK企業なら[1]~[3]の比重が大きく、200件以上公開している企業なら[4]の負担が大きくなる傾向にあります。
いずれにせよ多くの支出が発生してしまっている以上、少しでも多くの収益を上げないといけないのが営利企業の性。
可能な限り片手仲介よりも両手仲介を目指すのが理に適うって流れです。
③営業マンに「両手仲介前提」の厳しいノルマが課されているから
最後は現場目線の考え方です。
大手不動産会社は両手仲介を狙うものです。ここは揺るぎません。
そうなると、そこで働く営業マンに与えられるノルマも両手仲介前提のものになってくるのです。
分かり易くするために例えを挙げましょう。
♦営業マン:月間の仲介売上ノルマが500万円(税抜)だった場合♦
〇3,000万円の物件を両手仲介で成約させた!
➡192万円の仲介手数料を獲得!ノルマ達成率:38.4%
〇3,000万円の物件を片手仲介で成約させた。
➡96万円の仲介手数料を獲得!ノルマ達成率:19.2%
ノルマをクリアするには「貴重な専任物件で両手仲介する」のが最重要テーマになる。
いくら大手不動産会社でも無限に専任媒介などの元付物件を抱えられるわけではありません。
そんな貴重な「金のなる木」を他社に客付されてしまっては、営業マン自身がノルマ達成するまでの道のりが険しくなるだけ。
またお客さんによっては
「自社で専任媒介結んでいる元付物件」よりも
「他社が公開している客付物件」の方を買いたいという人もいますからね。

大手営業マンにとっての片手仲介とは「自社物件を他社に客付してもらう時の取引」ではなく、
「他社物件を自社で客付する時の取引」ということです。

自社物件は囲い込んで両手仲介を狙いつつ、その合間に他社物件を紹介して片手仲介でも稼ぐ。
これが大手営業マンの日常になっているのです。
ここで営業マンがバカ正直に

やっぱ囲い込みなんてダメだ!売主を守るために業者にもちゃんと仲介して貰わないと!
なんてやっても、用意されたノルマがクリア出来ずに苦しむだけなのですよ。
大手不動産会社こそ物件情報を囲い込む理由、これで伝わりましたでしょうか?
※補足ですが、500万円のノルマを片手仲介一本で達成させることも可能です。
1憶6,500万円の物件なら3%+6万円で仲介手数料が501万円になります。
まあそんな物件ばかりのエリアではその分ノルマも高くなるでしょうけど。
まとめ:大手不動産会社は囲い込むもんだと割り切ろう。

まとめます。
【大手に売却依頼するなら?】
〇営業マン「レインズ載せますよ!ウチは囲い込みなんてしませんから!」を信じて良い?
⇒実際にしているかどうかはさておき「囲い込む」もんだと覚悟しておきましょう。本当に囲い込みしていないかどうかは、基本的に調べようがありません。
対策:専任媒介期間(3ヶ月)の更新は慎重に。少しでも疑ってしまうなら他社に乗り換えてもOKの選択肢を持とう!
〇値下げしてくれれば買いたい人がいると言われたら?
⇒売主のアナタが値下げ後の金額でも構わないなら別に良いですが、その不動産会社にとっては値下げしてでも両手仲介出来た方が儲かるという事実を忘れずに。囲い込みされていなければ他にアナタの希望価格で買ってくれる人が見つかる可能性もあるのです。
対策:アナタが納得行くような客観的な根拠を示してもらおう!値下げ後の金額でも妥当だとアナタが判断出来るならOK。急いでいないなら強気に断ってもOK!
【大手で物件を購入するなら?】
〇専任物件を優先的に紹介してきたらどうすれば良い?
⇒両手仲介を狙ってきています。既に「囲い込み」している物件の可能性が高いです。その物件が希望条件を満たしているならむしろお得な案件ですが、強引に希望条件へ当て嵌めようとしてくる事もあります。
対策:ちゃんとその物件に興味を持てたかで判断しよう!興味を持てたら値下げ交渉もさりげなく行うこと。専任物件なら両手仲介欲しさに売主へ交渉してくれるかもしれません。
以上です。
重ね重ねにはなりますが「大手=悪」と決めつけるのは得策ではありません。
大手の販売力はガチです。知名度の高さは立派な武器です。

しかし「大手=安心」と盲目に信じ続けることもNGだと私は言いたいのです。
彼らは彼らなりに日々何かに追われて仕事をしていますから、
そこを理解しておかないと都合の良いお客様として処理されてしまうリスクがあります。
また大手企業だと毎年新卒も入社します。新卒~若手社員はまだまだ経験の浅いヒヨッコです。
そんな若鶏に接客されるよりも、地場で実績を積み重ねてきたベテランに紹介して貰った方が良い人もいるでしょう。
大手が良い!地元に根付いた企業が良い!と決めつけるのではなく、
どちらのメリット・デメリットも把握したうえで、自分に合いそうな対応をしてくれる会社を選ぼうとする意思こそが大切ではないでしょうか。

それでも「いま取引している不動産会社について他者の評価を聞きたい!」
という人は以下の記事も読んでみて下さい!少しは力になれるかと思います!
では、今回はこの辺りで。
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